夏がく~れば思い出すのは遥かな尾瀬なわけですが、安田記念がくれば思い出すのはノースフライト一択なわけです。
ノースフライトといえば、エアグルーヴ、ウォッカ、アーモンドアイ、ダイワスカーレット、クロノジェネシスといった超名牝に比べればワンランク下の位置に評価されているわけですが、私の中では超のつく名牝。
規格外のウオッカは別として、出身がノーザンでも社台でもなく大北牧場というのがまたいいじゃない。大北牧場で繋養されたノースフライトの母シャダイフライトは、その名から分かる通り、もともとは社台の繋養馬。初期には当時の大種牡馬ノーザンテーストを何度も付けられながらも目立った活躍馬を出せず、挙句の果てに、見切られる形で繁殖セールに出されてしまう。トニービンの仔を宿した形で。
繁殖セールで大北牧場に購入されたシャダイフライトは無事にトニービンの仔を出産し、それがノースフライトだったというわけ。社台としては逃した魚は大きかったということになるが、この業界ではこういうケースはままあること。結果の出ない繁殖をいつまでも抱える余裕はないし、見切る時には見切らないとならない。そのタイミングが難しいのだが、トニービンを宿した母を手放すとは、当時はまだそこまでトニービンに期待していなかったのだろうか。
さて、そのノースフライト。デビュー戦が桜花賞も終わった後の3歳5月。その年の桜花賞、オークス馬ベガもまたトニービンの仔だったわけだが、ベガが華々しく脚光を浴びる最中にローカルの新潟でひっそりとデビュー戦を迎えた。そこで衝撃の9馬身差V。2戦目も8馬身差で勝利して一躍秋に向けてニューヒロイン誕生の予感。
しかし3戦目を熱発明けで取りこぼしたのは誤算。3冠目のエリザベス女王杯に出走するためには、もう一戦たりとも落とせない状況だったから。そこで陣営が選んだのは2勝クラスの身で府中牝馬Sへの格上げ出走。通常であれば除外だったろうが、この年は何故だか出走できた。とはいえまだキャリア3戦、しかも前走では2勝クラスでも5着に敗れている。
並の馬なら経験を積むための参加賞だろうが、ノースフライトはその高いハードルをあっさりクリア。前年のエリザベス女王杯2着馬メジロカンムリらを相手に横綱競馬で完勝。2勝クラス、3勝クラス、OPを3階級飛び越えての重賞制覇。長らく競馬を見てきたけれど、このレベルの偉業を成し得たのは後にも先にもノースフライトくらいじゃないかなと(そもそも出走が難しい)。
わずかキャリア4戦で挑んだエリザベス女王杯では春の女王ベガには先着したものの、直線インからうっちゃったホクトベガの強襲の前に2着。それでもホクトベガとて時代に名を残した名牝。時代はベガからノースフライトへを予感させるに十分な走りであった。
次走以降、ノースフライトの快進撃が始まった。牝馬同士に敵はいない。阪神牝馬特別、京都牝馬特別では赤子を捻るかのように連勝。試金石となった次走のマイラーズCでは初の牡馬古馬との対戦だったが、逃げ馬を自ら潰す強気の競馬でマーベラスクラウン、ネーハイシーザーらに勝利。マーベラスクラウンは同年にジャパンカップを、ネーハイシーザーは同年に天皇賞(秋)を制することになる。
そんな馬だから当然のように次走の安田記念も勝つわけだが、このレベルの馬が5番人気だったあたりがオッズの歪み。この年から安田記念が外国馬に解放されて、大挙強豪が襲来したことにもよるのだけど、そんな強豪たちをぶっ飛ばす快走だったから未だに記憶にも残っているのだろうね。
秋にマイルCSも制してそのまま引退。わずか1年半の競走生活は引き際の美学ではあるけれど短すぎた。もう1年現役を続けていれば、ヤマニンゼファーやシンコウラブリイらとのマイル決戦が見られたのにね。
ノースフライトは秋の天皇賞に出ていれば勝っていたんじゃないかなと今でも思っている。この年の秋天は大本命のビワハヤヒデが直線伸びず、ネーハイシーザーが勝利。そのネーハイシーザーを春には完封していたのがノースフライトなわけで、今さら叶わぬ願いとはいえ、秋天で走る姿を見たかったなぁ…と。
さて、ノースフライトの思い出はこの辺にして、今年の安田記念出走馬で秋天で走って欲しい馬がソウルラッシュだ。ノースフライトとは対照的に昨年のマイルCSで引退するかと思いきや、7歳になった今年も現役を続けてくれて、何ともファン冥利に尽きる馬。そして現役を続けたことがズバリ奏功してドバイターフを制覇。
ドバイターフではあのロマンティックウォリアーを下す大金星を挙げたわけだが、個人的には戦前から勝つ目はあると見ていた。当時はロマンティックウォリアーの臨戦過程が良くなかったので負けるとしたら今回あたりと思っていた。当時はその筆頭にソウルラッシュではなく、ブレイディヴェーグを挙げてしまったが、ソウルラッシュの力も評価していたので、勝たれてみればさもありなんといった感じ。
レースに関しても、ブレイディヴェーグが普段とは異なる積極策で外目を回されたのに対し、ソウルラッシュはCデムの完璧なアシストで道中はじっくり脚を溜め、狙いをすまして仕掛けのタイミングもばっちり。日本最強マイラーがこれだけ完璧に乗っても僅差だったあたりがロマンティックウォリアーのすごさでもあるわけだが。
さて、ここで1800mもクリアしたソウルラッシュ、伯父には青葉賞勝ち馬ヒラボクディープのいる長めの距離もいける配合馬。かたくなにマイルばかり使われてきたが、本格化前に中距離で結果が出なかっただけで2000mまでなら全然いける。と個人的には思うのだ。前走1800mで世界最強馬に勝ったわけだから、ぜひとも秋には天皇賞へ。毎日王冠→天皇賞→マイルCSの路線でカンパニーのように有終の美を飾って引退というストーリーはいかがだろうか。
なんていう勝手な妄想を抱けるのも競馬の良いところだが、秋天に挑むにあたっては安田記念を勝つことが最低条件になりそうで、そこに関してはそれなりにハードルがありそうだなというのが現時点の見立て。
オークスのエンブロイダリー、ダービーのミュージアムマイルを見るまでもなく、前走で完璧な立ち回りで勝った馬というのは、およそ前走以上のパフォーマンスを発揮できる可能性は少なくなわるけで、今回のソウルラッシュに関しても、前走のドバイターフは完璧なアシストを受けての勝利。今回もCデムが騎乗するならまだしも浜中騎手への手替わり。
浜中騎手といえば3年前の安田記念の一度のミスにより、その後はクビになってしまったが、もとはソウルラッシュの主戦だった男。今回に関しても、本来であれば団野騎手への手戻りが妥当なところを、なぜか3年越しに浜中騎手に手綱が戻ってきた。よって、彼としても期する思いは強いだろうし、私としても、ただでさえソウルラッシュに勝って欲しいところを、浜中騎手の手綱であれば尚のこと狂喜乱舞案件なのだ。
ただ、先ほども述べたように、勝って欲しい気持ちはあるけれど、臨戦的には良し悪しなのが今回。ドバイターフからの臨戦というのは、過去にアーモンドアイ、シュネルマイスター、セリフォスらが好走した相性の良いローテ。
ただ、ドバイターフを勝ったアーモンドアイは3着に不覚を取り、ドバイターフで力を発揮できなかったシュネルマイスター、セリフォスが2着に巻き返した。
今年のソウルラッシュは勝っての参戦(しかも完璧に立ち回った上での)。しかも東京では未勝利ときた。その上で1番人気必至。好きな騎手と馬のコンビではあるけれど、シビアに予想するならば、本命を打つには気が引けてしまうなぁというのが月曜段階での率直な思い。
ソウルラッシュ(→)A
とはいえ7歳になっても今が旬の日本最強マイラーであることは確か。稽古の動きを見ても、"老いて益々盛ん”な黄忠(三国志に出てくる老将軍)を思わせる充実度。黄忠好きな私としては何とも応援し甲斐のある馬なわけで評価をB以下に下げることはできないなと。何せ3年以上もの間、国内で崩れたのは安田記念の2戦だけで、その時はまだG1では伏兵扱いだった上に道中スムーズさも欠いていた。勝ち切りまではどうかでも、馬券外のシーンも想像しにくく、あれやこれやいいながら最終的に◎の目はまだ残されている。
本日は想い出語りが長くなり過ぎてしまったので、他馬は評価だけ。火曜日以降、時間が取れれば見解も記していきます。
ウォーターリヒト(→)C
ウインマーベル(⤵)C
エコロヴァルツ(⤴)B
ガイアフォース(→)B
サクラトゥジュール(⤴)C
シャンパンカラー(→)D
シックスペンス(⤴)A
ジャンタルマンタル(→)B
ジュンブロッサム(→)B
トロヴァトーレ(⤵)C
ブレイディヴェーグ(⤴)B
マッドクール(→)D
レッドモンレーヴ(→)C
ロングラン(⤵)C
特別戦からの注目馬(人気でしょうが無難に行きます。複コロ候補かも)
先週挙げた馬⇒テーオールビー 3番人気11着
いつまでたっても人気が落ちないねぇ…というのが戦前の思いでしたが、レースでもハイペースに巻き込まれて苦しい立ち回り。月曜段階で騎手が未定だったように陣営の勝負度合いも微妙だったか。牝馬限定戦待ちかもしれませんが、牝馬限定ならまた人気もしそうで買いづらい馬になってしまいました。

1970年代生まれ。生粋のギャンブラー(中央競馬のみ)でありながら、自然散策や温泉、寺社仏閣巡りなど一見すると相反するような殊勝な趣味を持ち、毎週のように出かけているので馬券は旅先で買うことが多くなっている。便利な現代に感謝。ほか、三国志や中韓歴史ドラマをこよなく愛し、中国4000年の歴史を持つ気功や太極拳などもかじっている。実生活では愛猫との2人暮らし。セミリタイアを夢に、競馬だけでなく、株式投資やFX、せどりなどいろんな金稼ぎには大いに興味あり。このブログもアフィリエイトやGoogleアドセンスを始めるきっかけとして立ち上げた。